2017年度の介護保険料に対する
審査請求にかかる口頭意見陳述結果のまとめ。
11月5日(大津市、草津市)と27日(近江八幡市)、滋賀県介護保険審査会に於いて2017年度の介護保険料に対する審査請求にかかる口頭意見陳述が行われました。
2016年4月以降、行政不服審査請求法の改正により審査請求者が処分庁に対して、処分について質問することができるようになり、今回は審査請求者の質問、処分庁の回答、意見陳述、審査会委員による審査となりました。
2017年度の介護保険料に対し県下11市町135人が審査請求を行い、内大津市、草津市と近江八幡市の審査請求人、代理人が口頭陳述を行いました。
滋賀県生活と健康を守る会連合会は、口頭意見陳述に対して事前に質問と意見陳述の内容について学習会と質問項目の分担を決めて臨みました。
11月5日、大津市、草津市の口頭意見陳述での質問項目とその理由、および処分庁の回答は以下の通りです。
質問①介護保険料は、被保険者の所得(収入)に対する率(負担率)で低所得者に高く、高所得者には低いという著しい逓減制で不公平である。と考えるが処分庁の見解を聞く
(理 由) 社会保障制度・分野における所得再分配の考え方に反する。 所得再分配は、公的年金や医療、介護などの社会保障給付による富の再配分とともに、応能負担の原則に応じ、所得の高い者にはより高い負担率で税金や社会 保険料を課すこととされています。
質問②賦課総額算出に際して必要保険料額を収納率で割り戻して賦課総額とし、滞納見込額を被保険者に負担させる方式で、保険者として100%収納の責任を果そうとしていない。と考えるが処分庁の見解を聞く。
(理 由)介護保険法施行令第38条にこのことが規定されている。この点を強調することで、普通徴収被保険者(とりわけ、払いたくても払えない)への徴収強化につながる、との意見もあるが、収納率で割り戻すことによって、滞納見込み分を負担させる社会的合理性、社会的合意はないと考えているし、民主的手法とはいえない。
質問③世帯員(家族)の課税状況(収入状況)によって保険料が左右される。ことについて処分庁の見解を聞く。
(理 由) 税や国保料(税)その他の徴収金にはない料金算定方式で、個人主義に反するものです。
大津市の場合、第1段階:市民税非課税世帯、かつ本人の合計所得金額+年金収入額が80万円以下の保険料は34,290円。 第5段階:本人市民税非課税、世帯市民税課税で本人の合計所得金額+課税年金収入額が80万円超の保険料は76,200円。その差は約43,000円となる。
質問④所得階層別保険料制度により所得(収入)が1円違うだけで保険料では万円単位の違いが出る。不公平感甚だしい、処分庁の見解を聞く。
(理 由) 大津市の場合、第4段階:本人市民税非課税、世帯市民税課税で本人の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の保険料は60,960円。 第5段階:本人市民税非課税、世帯市民税課税で本人の合計所得金額+課税年金収入額が80万円超の保険料は
76,200円。 よって、本人市民税非課税、世帯市民税課税で本人の合計所得金額+課税年金収入額が1円多いだけで保険料は15,240円増となります。 質問①で述べた所得再配分論と相容れないものです。
回 答:大津市、草津市とも、介護保険法、同施行令、施行規則、各市の介護保険条例等々の規定により、まだ所得段階については国9段階に対して草津市は12段階、大津市は13段階としており負担の差は軽くしている、と論点のずれた回答しかできませんでした。
また、大津市には
質問⑤介護保険法施行令第38条第2項「前項の基準額は、計画期間(法第百四十七条第二項第一号に規定する計画期間をいう。以下同じ。)ごとに、保険料収納必要額を予定保険料収納率で除して得た額を補正第一号被保険者数で除して得た額を基準として算定するものとする。」に反して、保険料収納必要額を予定保険料収納率で除さず、乗じて得た額を補正第一号被保険者数で除して得た額を基準として算定している。なぜか?
(理 由) 明確に介護保険施行令に反するものである。 について大津市は乗じたのは間違いで、同時に被保険者数も間違った数字だったと回答したが、原因は分からないままのとのこと。
質問⑥大津市の第6期における介護保険料額18,990,051千円は、費用総額80,716,277千円の23.53% となります。 これは、1号被保険者の負担率22%を超えるものです。他の市町の資料から推測すると、国庫調整交付金5%に対する不足額を1号被保険者の保険料に加算しているものと思われる。 そのように算定する根拠を明らかにしてください。
回 答:大津市は明確な回答が出来ませんでした。草津市は、法的根拠はあるが事前に通告をもらってなかったので今は資料を持ち合せていない。
口頭意見陳述について、当初は30分の時間設定がされていましたが、大津市の場合、審査会委員からも処分庁に対して質問と資料提供を求める場面、審査請求に対しての質問もあり1時間以上かかりました。
11月5日の大津市と草津市の経験を経て27日の近江八幡市の口頭意見陳述に望んだので質問事項は重複するが結果は次の通りです。
担当:岡崎
質問①介護保険料は、被保険者の所得(収入)に対する率(負担率)は低所得者に高く、高所得者には低いという著しい逓減制で不公平である。と考えるが処分庁の見解をお聞きします。 <具体的事例> 第5段階で所得90万円の被保険者の負担率は6.53%ですが、第9段階で所得399万円の被保険者の負担率は2.49%。極端な例を出せば第10段階で所得が1000万円の被保険者なら1.18%です。この客観的事実は認められますねー。
(理 由) 社会保障制度・分野における所得再分配の考え方に反するやり方です。
所得再分配は、公的年金や医療、介護などの社会保障給付による富の再配分とともに、応能負担の原則に応じ、所得の高い者にはより高い負担率で税金や社会保険料を課すこととされています。 平成29年度介護保険事業会計決算書の概況で「平等な負担で公平なサービスを受けることができ・・」と書かれているが、平等な負担とは言えない。
回 答:負担率の客観的事実は認める。しかし、それをもって「著しい逓減性で不公平」とは思わない。(ちょっと苦しい答弁) 介護保険料は、介護保険法第129条、施行令第38条、第39条、市介護保険条例32条により賦課している。 第2段階では、国の基準0.75に対して0.625とし、国は9段階に設定しているが,近江八幡市は第10段階をもうけて、基準額の2.0倍(国は9段階で、1.7倍)としている。 それぞれ、法令、条例の仕組みとなっており、行政として仕組み通り適正に執行している。
質問②賦課総額算出に際して必要保険料額を収納率で割り戻して賦課総額とし、滞納見込額を被保険者に負担させる方式で、保険者として100%収納の責任を果そうとしていません。 この計算により、1号被保険者の保険料率は22%でなく、23.18%となり、約束と違う。と考えるが処分庁の見解をお聞きします。
(理 由) 介護保険法施行令第38条にこのことが規定されているが、滞納見込み分を被保険者に分担して負担させる社会的合理性、社会的合意はないと考えているし、民主的手法とはいえない。
回 答:介護保険法施行令38条により適正に行っている。平成29年度の収納率は99.5%だった。 滞納分については、督促、催告、収納課での徴収など努力をしている。 1号被保険者の保険料率は、法律のどこにも書かれていない(長寿福祉課員)【と、ちょっと挑戦的。なら保険料必要額の算定根拠を明にするべきです。】
確かに、【介護保険法第八章 費用等 第一節 費用の分担の項で1号被保険者の負担率は明記されていない。法第129条1項では保険料を徴収しなければならない。2項では政令(施行令38条で)で定める基準によるとなっている。
制度発足時、被保険者の負担率は第1期、1号被保険者17%・2号被保険者33%とし、以後高齢化の進行により、期を追うごとに1号被保険者の負担率は1ポイントづつ増え、2号被保険者の負担率は1ポイントづつ減る、と説明されている。そして第6期では1号被保険者22%、2号被保険者28%と設定】
担当:椎葉
質問③世帯員(家族)の課税状況(収入状況)によって保険料が左右される。ことについて処分庁の見解をお聞きします。
(理 由) 税や国保料(税)その他の徴収金にはない料金算定方式で、個人主義に反するものです。
近江八幡市の場合、第1段階:世帯員全員が市民税非課税で、本人は前年の合 計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の人 保険料は26,460円。
第4段階:世帯の誰かに住民税が課税されているが、本人市民税非課税で、前 年合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の人 保険料は49,980円。 その差は約23,520円となります。
質問④所得階層別保険料制度により所得(収入)が1円違うだけで保険料では万円単位の違いが出る。不公平感甚だしいことについて、処分庁の見解をお聞きします。
(理 由) 近江八幡市の場合、第4段階:世帯の誰かに住民税が課税されているが、本人 市民税非課税で、前年合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の人の保 険料は49,980円。 第5段階は「世帯の誰かに住民税が課税されているが、本人 は住民税非課税で、上記以外の人。」となっている。
つまり、世帯の誰かに住民税が課税されているが、本人市民税非課税で、前年の合計所得金額+課税年金収入額が80万1円の人の保険料58,800円 その差は8,820円 ①で述べた所得再配分論と相容れません。
回 答:介護保険法施行令第38条、第39条、市介護保険条例等法令で規定されている、仕組み上やむを得ない。
担当:八木
質問⑤保険料基準額算定に際して、国庫調整交付金相当額と見込額の差額を第1号被保険者負担割合に合算して保険料収納必要額とする、法的根拠を明らかにしてください。
(理 由)「国庫調整交付金相当額と見込額の差額」を合算することで、第1号被保険者の負担割合が22.98%となります。ここでも、約束が違います。
質問⑥国庫調整交付金相当額と見込額の差額を第1号被保険者負担割合に合算したものを収納率で除して保険料基準額を算定しているが、これは誤りではないか?
(理 由)国庫調整交付金相当額と見込額の差額は、理論的には100%交付されるもので収納率で割り戻す性格のものではない、しかも第1号被保険者の保険料収納率を用いることの合理性は全くないものと考える。
回 答:介護保険法施行令第38条第3項で決められている。差額を1号被保険者保険料に含めば、収納率で割り戻すのは当然。
【しかしながら介護保険法施行令第38条第3項は、「・・・保険料収納必要額・・・は、計画期間における・・・第一号に掲げる額の合算額の見込額から第二号に掲げる額の合算額の見込額を控除して得た額の合算額とする。
第一号 介護給付及び予防給付に要する費用の額、市町村特別給付に要する費用の額、地域支援事業に要する費用の額、保健福祉事業に要する費用の額、財政安定化基金拠出金の納付に要する費用の額、法第百四十七条第二項第一号に規定する基金事業借入金の償還に要する費用の額並びにその他の介護保険事業に要する費用(介護保険の事務の執行に要する費用を除く。)の額の合算額
第二号 ・・・(国、県、市)の負担金、・・・調整交付金、・・・交付金(2被保険者保険料)、・・・介護給付費交付金(2号被保険者保険料)、・・・地域支援事業支援交付金、・・・補助金その他介護保険事業に要する費用のための収入・・・の額の合算額。 となっており、国庫調整交付金相当額と見込額の差額を第1号被保険者負担割合に合算して保険料収納必要額とする、とはなっていない。 法令を曲解し、収納率で割り戻すのは当然などと二重三重に誤りを犯している。】
【 】内は、後日介護保険法を読み直して書き加えた。
最終陳述
1). 1号被保険者の保険料率について、法律にかかれていないという点について、そうであっても、国の約束は22%、収納率で割り戻すことで23.18%となり、国庫調整交付金相当額と見込額の差額を第1号被保険者負担割合に合算で22.9%となる。
2). 「国庫調整交付金相当額と見込額の差額を第1号被保険者負担割合に合算」について、介護保険法施行令38条に、回答にあったようなことは書かれていないはず。
3). 回答は介護保険法、同施行令、市介護保険条例に即しているというが、質問には正面から答えていない。
4). 地方自治法第1条の2、住民の福祉の向上の為に尽くすこと。
5). 以上の理由により、本件処分を取り消すとの裁決を求めます。
なお、本件については「発言内容については、発言者が誰であるかに関係なく、みだりに公にしないこと」と審査会での申し合わせがあり、直ぐに関係当局への問い合わせなどは差し控えてください。
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